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敬語

海外に来てからの問題は日本語である。 日本語は毎年流行語があるため、例えばダサい、うざいなどの言葉を使っていたまま海外に渡ってしまう。 数年間経って新しく日本から来た人に、「うっざーー」なんて言葉を使ったら、「○○さん、なんて古い言葉を使ってるのですか!」っとププっと笑われてしまうかもしれない。 それを逃れるすべは一つ、きれいな日本語を使うことである。 つまり敬語である。 日本のアポトーシスの研究の大家である日本の教授に、ドイツからメールを送った。 返事はものすごくきれいな日本語で返ってきた。 こんな一介のペーペーのポスドクに、何もそんなきれいな敬語のメールを送ってくれなくても!と思った。 誠に恐縮の至り。 なぜなら、私は敬語をきちんと使えたためしがないからである。 先日も、非常に高度なきれいな敬語のメールをいただき、私は自分が日本人であるのにと思いながら、かなり赤面しつつ返事を書いた。 海外に来ると、日本の文化を再認識する。 博士課程を修了後に、会社にも助手にもならずに、それどころか就職活動もせずに海外でポスドクをしてしまったら、敬語を練習する場というものが存在しな い。 ということで、友人に買ってきてもらった敬語の本を開けて、勉強することにする。 今日の教訓 敬語は一日にしてならず。

日本とドイツの識字率

ドイツ人のアルファベットの次の質問はこれである。 「じゃ、例えばこのぐらいの新聞を読める日本人は何%ぐらいいるの?」 と南ドイツ新聞を指して訊く。つまり普通の日刊紙である。 「そんなのみんな読めるよ。」 「えーーーー!!!!!!!」 再び尊敬の目。 というか、こっちが「ドイツ語の新聞読めないドイツ人ているのか?」とびっくりした。 しかし後にその理由がわかった。 ある日私はテレビを見ていた。ドイツ語がわからなくったってドイツ語のテレビを見るのだ。 その中のCMの話。 仕事中にある人が間違いを犯したらしく、上司に「何だってこんなミスをしたんだ! この看板が見えなかったのか!」と怒られている。 しょんぼりして、じっと怒られているしている部下。上司はかんかんに怒っている。 そこに仲裁に入った人の言った言葉「シェフ(ボスのこと)。彼はドイツ語が読めないんです」 上司「え?」 「彼はドイツ語が読めないんです」 つづく画面「ドイツにはウン万人の文字が読めない人がいます。なんちゃらかんちゃら。。。。。。。」 正確な数字はわすれたが、とにかくかなりの数字である。 これにはびっくりした。ドイツにはそんなに文字の読めない人がいるのか。 数分後、はたと思い当たった。 それって私のことじゃんかーーー!!!! ドイツ語の読めない労働者がここにも一人いるぞ。 ドイツは周りの国から働きに来ている人が大勢いる。私もはるばる日本から働きに来ている。 彼らはしゃべることはかなり出来るようになるが、とてもドイツ語を読むまではいかないだろう。そういうことを考えると、南ドイツ新聞を読めない人がドイツ にいたって全然不思議でないのである。 逆に考えると、日本で識字率が非常に高いのは、非常に教育熱心な国であることに加えて、働いている外国人は非常にすくないということが原因なのだろう。 ちなみに南ドイツ新聞は、9年ドイツで暮らした日本人でも読むのは大変だそうだ。

3つのアルファベット

ドイツ人は日本に興味があるらしく、いろいろ質問してくる。 よく「ねえ、日本語には3つのアルファベットがあるって聞いたけど、本当?」ときいてきた。 最初なんのことだかわからなかったが、しばらく考えて思い当たった。 「そうだよ。漢字とひらがなとカタカナというのがあって、ひらがなとカタカナは50字ずつあるの。ひらがなとカタカナは普通発音と対応してるの。そして、 ひらがなは普通の言葉に、カタカナは外国から輸入した言葉に使うの。そして、漢字は大昔に中国から輸入したもので、一つの漢字には中国から輸入した読み方 と日本式の二通りの読み方がある。漢字は大体2つか3つの漢字で一つの意味で、そのコンビネーションによっていろいろ変わるの。」 ここまで言うと、アルファベットが30文字ぐらいしかないドイツ人は尊敬の目をしている。 「すごいね!よくそんなにいろいろ扱えるねー!日本人はすごい賢いんだ!」 と言われると、こっちもすごいんだ!という気分になるが、一応尊敬させておくだけでは悪いので、 「スペリングと同じだよ。ドイツでもアルファベット長々と書くじゃん。それを一つの場所に押し込めただけ」 というとやや安心しているみたいだが、まだ尊敬している。 私の親情報によると、ドイツでは英語教育が行き届いた結果、若者がドイツ語よりも簡単な英語の単語を使うようになってしまい、問題になっているそうだ。当 たり前だがアルファベットが一緒なので、英語とドイツ語が混ざってしまうのである。その点日本語に英語が混ざる予定はなさそうだ。外来語はカタカナとして 入ってしまうからだ。 研究者が書く日本語の場合はさらに面白い。春に日本のフェローシップの申請書類を書いていた。ためしに書き終わった後、冗談で「これ読める?」とボスに見 せてみた。 「当研究室ではSLEの病態の研究が行われている。SLEにおいては、自己DNAによりB細胞あるいはDCが活性化されることが示されており、その機構が 主な研究内容である。」 ボスの感想 「何がなんだかわからんが、時々書いてある英語の単語だけわかる」 英語をいちいち日本語に訳するのは面倒だし、日々新しい名のものが発見されていくので、こういう風になるのである。 ということで、4つのアルファベットを駆使する日本人は、かなりフレキシブルな頭脳の持ち主である(本当か?)

RとLの違いなんてわからない

Lost in translationを見た次の日に私の友達が研究室で始めた会話 「すっごい面白かったよ。特にホテルの部屋に来た女の人が『リップ マイ ストッキング』って言ってるの。『リップ マイ ストッキング』だってよー」 他の友達「そうそう!『リップ マイ ストッキング』!」 私「????????」 その友達は私に向かって「え?わかんないの?リップ マイ ストッキング??」 「本当にわかんないのー????」 ドイツ人みな大爆笑 くやしいが、RとLの違いなんてわからない。 昔RとLの発音についてのセクションが入ったCDを持っていたが、これは絶対わからない。 Lap topを間違えてRap topと言うとかなり意味不明になる。Lap topはノートパソコンのことだが、Rapはラップミュージックのことだからだ。 ということで、いろいろなRとLのジョークが研究室に飛び交っていた。 私が「私にはRとLの違いなんて当分無理だよ」テクニカルアシスタントの友達に言ったところ、彼女は「この人生では無理だねー」と言ってきた。 日本人はRとLの区別が無理だが、他の人も実は苦手なものがある。 たとえばフランス人は最初のHの発音が出来ない。私の高校の英語の先生は「フランス語では林さんは『あやしい』になる」と話していた。今フランス人と働いているが、本当に単語の最初のHはできない。 ドイツでもあまりにスペイン人の友達が私のRとLをからかうものだから、「Susi Makes Sushi(スージーが寿司を作る)って言ってみろ!」と言うと「しゅーしぃー めいくす しゅーしぃー」と全くわけがわからなくなる。もちろんドイツ人 のスージーは隣で「何だって?」という顔をしている。 彼らはVとBの違いもわかりにくいそうだ。 ドイツ人も日本語を習うときに「しゃ」「ちゃ」「じゃ」などがわかりにくいと言ってたと思う。 そう言えばタイ人も茶碗を「しゃわん」と言っていた。 あまりスペイン人を"Susi Makes Sushi"でからかいすぎると、すごい巻き舌RとL攻撃を返してくるので注意。 ああ、またスティーブン・スピルバーグのつづりをSpierbergと書いてドイツにメールを送ってしまったぞ。きっと「また日本人がRとLをごっちゃにしている」と、受

「Lost in Translation」の国にようこそ

日本の学会で招待講演をするという大ボスが私のところへやってきた。 手に小さなカードをいっぱい持っている。 「お願いがあるんだけれど、ここに書いてある英語を日本語に訳して書いてくれない? もし困ったときに見せるから」 私「ひょっとして"Lost in translation"見ましたか??」 大ボス「うん。。。」 Lost in translationは、アメリカの俳優がウイスキーの宣伝のために来日するが、日本人が英語が出来ないために、大変な目に遭うという映画だ。ある意味日本をおちょくっているのではないかとも思う。 これを日本で普通に見ても面白くないだろう。 この映画お勧めの楽しみ方は、外人と一緒に見ることである。 ドイツにいたときに研究室の友達10人ぐらいとLost in translationを見に行こうということになった。私を考慮してか、英語バージョンである。 もちろん日本語は私しかわからない。 ウイスキーの宣伝のところは楽しかった。映画館中の人々が完全にLost in translationする中で、一人日本語のわかる私だけ爆笑! 映画の終わった後、「ねえねえ、あのCMの監督なんて言ったの?絶対『Just look the camera (カメラを見て)』だけ言っていたわけじゃないでしょーーー???あんなに長いことしゃべっていたのに!」と聞いてくる。 彼らには永遠にわからないままなのだ。なぜならそこだけ字幕がついてくるわけではないから。 レストランのメニューも楽しかった。字が読めなければしゃぶしゃぶ用の肉なんて全部一緒に見える。もちろんドイツ人も笑う。 一緒に見たドイツ人、スペイン人の感想としては、 「あのホテルの窓大きかったねえ。日本の窓はあんなに大きいの?」 そう。台風の国にもかかわらず、私達は大きな窓が好き。ドイツの窓も好きだが、大きい窓もいい。 「ねえねえ、あのレストランでウエイトレスが着ている服あるでしょ? あの背中についているリュックサックみたいなのは何?」 それは帯! 「日本にディスコないって言ってたけど、あるじゃん! うそつきー!!!」 あとは最初の場面でのネオンがいっぱいの道に驚いたとか、いろいろ言っていた。確かに、あのぐらいネオンのある場所というか宣伝のいっぱいあるところ