アメリカならでの薬の作り方

Venture Philanthropist(ベンチャー・フィランソロピスト)」とは、ベンチャーキャピタル(VC)の手法や考え方を取り入れて、社会的課題の解決に取り組む慈善活動家(フィランソロピスト)のことを指します。日本語では「ベンチャー型慈善家」「投資型社会貢献者」などと訳されることがあります。  - ChatGPTによる

アメリカの良いところが詰まった良い本を読んだ。これぞアメリカという感じの本である。

 Breath from Salt: A Deadly Genetic Disease, a New Era in Science, and the Patients and Families Who Changed Medicine Forever  (Breath from Salt: 致命的な遺伝病、新たな科学の時代、そして医学を永遠に変えた患者と家族たち)

Cystic fibrosis(嚢胞性線維症)の患者とその家族(主に両親)の話である。嚢胞性線維症は遺伝性の病気で、昔は2−3歳ぐらいで肺の感染で死んでいたらしい。両親は二つの遺伝子のうち一つが変異していても病気を発症しない。だが、子供に遺伝して子供の遺伝子の両方が遺伝変異を持っていた場合は病気を発症する。

 患者さんの親がCystic Fibrosis Foundation(CFF)を作って寄付を集め、お医者さんと協力してアメリカ各地に嚢胞性線維症の治療センターを作り、さらに寄付を集めて大学の研究者に投資して研究してもらい遺伝子を特定してもらい、さらに寄付を集めて会社に投資して薬を合成およびスクリーニングしてもらい、途中でその会社は他の会社に買われてしまったのでそこにも投資してさらに薬を作ってもらって臨床試験を行ってもらい、つぎつぎと薬の認可にこぎつける。会社に投資した時に契約をちゃんとしていたので、CFFは薬の収益をもらって次の投資を行う。。。という話である。 

本の最初の頃に出てくる患者さんは大学行くまで寿命が無かったのだが、読み進めるうちに治療方法が開発されてきて、患者さんは大学に行くことを考え始めて、大学に行っている患者さんが出てきて、その後子供を持つことを考え始めてとだんだん寿命が長くなって今や寿命は40歳以上! 

 本が終わるまでにCystic Fibrosis Foundationが集めた金額は$250 millionということである。今日のドル円換算でいくと、$250 millionは360億6962万円である。

どうやったらそういう桁でお金集められるかな。。。

お医者さんが病気を発見する過程、研究者が目的の遺伝子を見つけるまでの過程(その頃の最先端のサイエンス)や、会社が従来では全く考えられなかった作用機序の化合物を特定するまでの化合物の図や、肺が詰まった原因を取り除くための薬、肺の感染を取り除くための抗生物質およびその吸入器の発明などなど、サイエンスに興味のある読者にはいろいろ盛りだくさん。しかも臨床試験が始まったら、治療センターに患者さんが集まっているので、臨床試験に参加する患者さん集めも早い。

なんて 効率がいいんでしょ。

この病気、遺伝変異の場所の違いによっては開発された薬の恩恵を受けられないらしく、まだCystic Fibrosis Foundationは頑張っているとのことである。

本は英語で結構長い(576 pages)で、今のところ日本語版は出てなさそうだが、アメリカの患者さんの会は単なる患者さんの会ではなく、すごいFoundationがいろいろ物事を動かしていって、どうやって病気を治すところまで道を切り開いていくかを知りたい人にはおすすめである。

ビルゲイツもおすすめである。(13秒から)

 

今日の教訓 久しぶりに良い本を読みました。

Comments