研究者のための思考法 10のヒント 感想文その3
おとつい私のオフィスの棚を撤去していたら、ボスが来て「ところでなんでまたこんな椅子に座っているんだ?」ときいてきた(笑)
さて本題に入って。
ちょうど島岡先生の本を読み終えた後にこんな記事を発見。
スマホ普及で契約数は激減? ネット生保の想定外 出口治明・ライフネット生命保険会長兼CEO(日経新聞)
引用。
ところで6年間経営をやってきて骨身にしみたことは「世の中は何が起こるか分からない。変化に対応するのが経営の神髄」というごく当たり前の事実だった。
もう一つ引用。
以上、当社の実例を挙げたが、お客さまの意識も技術も日々進化し変化し続けているのだ。ダーウィンの進化論ではないが「強いものや賢いものが生き残るのではない。変化に対応したものだけが生き残るのだ」というのが世の実相である。そして、経営とは、まさにそういった社会の変化に対応していく適応活動そのものである。
だそうである。なるほど。「洗濯機と猫の話」に似ているが、人間は物ではなく生物だということをしっかり肝に命じておこう。皆様「上司が昨日言っていた事と今日言っていた事と違う!」と文句を言わないようにお願いします。それでも文句は言うけどさ(笑)(くわしくは、研究者のための思考法「その5 知的しなやかさ 結果を出すリーダーはみな軸がブレている」)
さて島岡先生の本によると、日本人は世界一リスクが嫌いでリスクを取らないらしい。私はファイナンスが趣味である。「その6 研究者のあたらしい働き方 ///スラッシュのあるキャリア」みたいにすると「研究者/備忘録ブロガー/ファイナンス貧乏道研究者(隣の億万長者目標)」みたいなもんである。
で、ファイナンスの観点からいうと、リスクを取らないと将来危ない。アメリカの年金には401kとか403bというやつがあって、自分で選択肢のなかから運用方法を選択する。昔は401kの口座に資金を入れたら自動的にMMF(マニーマーケットファンド 日本語でなんというか不明)になった。MMFというのは「銀行にそのまま預金」と変わらないのである。要するにちっとも増えない。10万円入れても次の年にはほとんど10万円である。その一方でアメリカのインフレは年3%とも4%とも言われる。つまり毎年入れていく10万円は毎年着々と価値が下がって行くのである。まあ実際は逆で「定期預金の利率はインフレよりも低い」が正しいような気がするが。
結果、老後資金は真っ青!
従って徹底的にリスクを取らないという選択は、老後資金を作るためには実はものすごく危険なのである。言わば、茹でガエルの喩えみたいなもんですな。『2匹のカエルを用意し、一方は熱湯に入れ、もう一方は緩やかに昇温する冷水に入れる。すると、前者は直ちに飛び跳ね脱出・生存するのに対し、後者は水温の上昇を知覚できずに死亡する』(ウィキペディア) ちなみに、この話はウソで、カエルは後者でもちゃんと脱出するらしい。生物をなめちゃいけません。
「老後資金を定期預金で運用」と同じで、「人生を定期預金みたいに運用」は危ない気がするのである。私だけか、このイメージ持ってるの?
ではアメリカ人の標準的な401kの選択肢はどうなっているかと言うと、ここ一年でなんだか改正されて、何も積極的に考えなければTarget retirement fundになるように初期設定されている。そして年齢によって株と債券、現金の割合が変わって行く。株が一番危険で、債券が次に安全で、最後が現金である。一番標準的なTarget retirement fundはVanguardである。
配分は20歳ならば、
89.84% stocks(株)
10.00% bonds(債券)
0.16% short-term reserves(現金)
さらに深くみると、
Vanguard Total Stock Market Index Fund Investor Shares 63.0%
Vanguard Total International Stock Index Fund Investor Shares 27.0%
Vanguard Total Bond Market II Index Fund Investor Shares** 8.0%
Vanguard Total International Bond Index Fund 2.0%
ということで、全体の63%がアメリカの株である。
65歳ならば、
51.61% stocks
48.39% bonds
0.00% short-term reserves
である。内訳は、
Vanguard Total Stock Market Index Fund Investor Shares 36.2%
Vanguard Total Bond Market II Index Fund Investor Shares** 32.1%
Vanguard Total International Stock Index Fund Investor Shares 15.4%
Vanguard Total International Bond Index Fund 9.6%
Vanguard Short-Term Inflation-Protected Securities Index Fund 6.7%
ということで、65歳でも全体の半分が株で運用され、36%がアメリカの株である。
すごくない? このリスクの取り方! アメリカ全体で401kとか持っている人達がこんな風にアメリカ経済に投資をしていると考えると、アメリカってすごい。まあアメリカ人の老後資金ほどの危険な人生を送らなくてもいいけどさ、「人生を定期預金のように運用」よりはちょっともうちょっとリスクを取ったほうがいいよね。
ちょっと脱線して「初期設定」で思い出した話。前にハーバードの地獄の英語教室のクラスメートと授業中に話していたときに、なんと彼は二回も臓器移植を受けたらしい。普通臓器移植は、自分で「臓器を提供します」のところをマークしないといけない。すると人間はああだこうだ考えるので、マークしないで放っておくので、結果臓器移植用の臓器は少なくなる。フランス(だったと思う)では法改正が行われて、自分で「臓器を提供しません」にマークをしないといけなくなった。提供するのが嫌な人だけマークするのである。人間は積極的に「臓器を提供します」のところをマークをしたりしないが、積極的に「臓器を提供しません」にもマークしたりしないのである。結果、移植用の臓器は多くなり、彼は臓器移植を受けれるようになったそうな。この話すごくない?
さて、本題のリスクに戻って。
「リスク」という言葉がちょっと日本人が考えているのとアメリカ人の考えているのでは違うのではないかと思ったのでウィキペディアにいってみた。
日本語のウィキペディア。
リスク (risk) の定義にはさまざまあるが、一般的には、「ある行動に伴って(あるいは行動しないことによって)、危険に遭う可能性や損をする可能性を意味する概念」 と理解されている。
英語版ウィキペディア。
Risk is the potential of losing something of value, weighed against the potential to gain something of value. Values (such as physical health, social status, emotional well being or financial wealth) can be gained or lost when taking risk resulting from a given action, activity and/or inaction, foreseen or unforeseen.
なんというか日本語のほうでは、「マイナスになる可能性もあるけど、成功したらものすごくプラスになる可能性あり!」というイメージがない。「危険」とか「損」とかばっかり、と思っていたら、ウィキペディア日本語の下のほうで発見。
語源: ラテン語で risicare は「勇気をもって試みる」ことを意味する。それから派生した英語 risk も、動詞としては同じ意味をもつ。
そうそう「勇気を持って試みる」、まさしくそんな感じ。リスクの意味は「勇気をもって試みる」であり、間違っても「危険」ではない。「リスクを取る」とは「危険なことをする」ではない。ちなみに私は人生の分かれ道に経った場合、必ず「こっちのほうがワクワクして面白そう」というのを選択することにしている。理由は死ぬ直前に「なんだかんだあったけど、楽しかったよね」と思いたいからである。(くわしくは「その3 研究者の幸福学」)。それから「その2 研究者と英語」から引用。
今でも難しい決断をするときには、「困難な道が正しいと思え」という原則を思い出す。
ラリー・ドニソーン(陸軍士官学校元教官)「ウエスト・ポイント流最強の指導力』より」
これはちょっと変更して、「今でも難しい決断をするときには、『困難だけれど、面白そうな道が正しいと思え』という原則を思い出す」ぐらいがいいかと思う(笑)。
さて私は「研究者はみな海外に行くべきだし、日本人が外にでるのは大いに奨励すべきだ」と思っている+「生物の喩えが気に入った」のでInvasive spiecies(外来種)の話をすることにする。ウィキペディアによると、
外来種(がいらいしゅ)とは、他地域から人為的に持ち込まれた生物のこと。生態系や経済に重大な影響を与えることがあり、環境問題のひとつとして扱われる。
である。3年前だったかにハワイのHiloというところに行った。キラウエア山を見に行くためである。安くてトロピカルな感じの宿に泊まったら、夜にカエルの大合唱になった。
Coqui frogという。なんでもプエルトリコから持ち込まれて、天敵がいなかったので爆発的に繁殖、いまや本国プエルトリコよりも数が多いそうである(笑)
ワカメも船と共にアメリカ西海岸に到着、増えて問題になっている。(ちなみにワカメを食べるのは日本人と韓国人のみらしい)
これを人間に置き換えて見るとアメリカなんか世界中から来たInvasive speciesであふれているのである。私も日本からのinvasive speciesである。きっとアメリカ来て3代目ぐらいは歩が悪いに違い無い。
例としてボストンのあるラーメン屋さんの話をする。
彼は数年前に知り合いのパーティで知り合った。ラーメン屋をボストンに作りたいらしい。話をよくきくと、なんでも京都天天有の隣でラーメン屋をやっているらしい。「ラーメン激戦区(今はもっと?)の一乗寺の天天有の隣でラーメン屋をやる、その心は如何に?」とその時思ったわけである。言わば在来種が内部で競争している具合ですな。一年後彼はラーメン屋をボストンにオープン。ご存知かどうか知らないが、ボストンのラーメン屋は最近増えても5店ぐらいである。アメリカでラーメンはなぜか最近ブームなので大成功、毎日長ーい行列ができている具合である。しかも最近NPR(National Public Radio)にも取り上げられた!なかなか面白い作戦を取っているためですな。
Can Finishing A Big Bowl Of Ramen Make Dreams Come True? (NPR blog)
ラーメンの競争もない海外で、見事invasive speciesとして成功した例である。もっとラーメン屋来てもらってもいいけど(笑)博多ラーメン希望(爆笑)。寿司屋は中国系と戦うと駆逐されるので、相当高級寿司屋じゃないといけないからおすすめしないけど、お好み焼き屋は受けると思う。なぜ無いお好み焼き屋!外人お好み焼き大好きよ。
そして研究者がInvasive speciesとして成功しようが成功しなかろうが、英語の出来る日本人は非常に貴重らしいので、その辺のbiproduct(副産物)もあることにも注目(笑)(くわしくは島岡先生の本「その2 研究者と英語 日本人研究者はなぜ英語を勉強しなければならないのか」)さらなる副産物としては、ストレスに強くなるので、抗脆弱性もアップ(笑)
最後におすすめ。
5月からScience magazineの内容がちょっと変わった。雑誌一番後ろのページにWorking lifeというコラムが加わった。最初の人は物理学者でそこそこ良かったのだが、ソビエト連邦の崩壊でソビエト物理学者がどっとアメリカに来たので競争に勝てず、アカデミックから去ることにして、あっさり職を得た奥さん(化学者)についていき、サイエンスライターとしての職を得て、そのうちScience Careerのページを担当するようになった。という話である。
次に面白かったのはBrewing a career。
オランダ人ポスドクで、泣く子も黙るHHMIのJaneria farmで働いていたが、熾烈な外部内部の競争をみて「ここは俺のいるところじゃない」と痛感。新種の酵母を発見したので、近くのビール醸造所でBrewmeisterとして働くことにしたらしい。すばらし。私も新種の酵母発見してビール製造したい!日本酒でもいいけど。
その他には、A giant leap。
俺のおじいさんは102,800フィート(約31km)上空からジャンプした。今までアカデミックでやってきたけど、俺もジャンプしてNon-profit organization(NPO 非営利団体)で科学者として4月から働く!という人の話。清水の舞台から飛び降りるとは言うけど、31km上空からとでは比較になりませんな。
という感じで、「ああ、そんな人生もあるのねー!」と読んでいて楽しいので、良かったらどうぞ。私は最近はScience magazineは家に送られてくると後ろから読んでいるのである(笑)。週末の朝ご飯を食べた後にコーヒーを飲みながらWorking LifeからScience magazineを読むのは最高である。誰か毎週日本語に訳してウェブにでもアップしてくれると、日本の科学者も元気づけられるからいいのだけれど。それともそのぐらい英語で読めって?
さて。
「研究者のための思考法」を読んで得たインスピレーションをずーっと書いていってもいいのだが、この辺でおしまいとする。本を読んだ人は、私のブログを読んで「どうしてここからこの話が出る?」と思うに違いないし(爆笑)。
今日の教訓 困難だけれど面白そうな道が正しいと思え。リスクの本当の意味は「勇気をもって試みる」であり、間違っても「危険」ではない。Invasive speciesになる。終わりよければ全てよし。
過去のブログ
・研究者のための思考法 10のヒント 感想文その2
さて本題に入って。
ちょうど島岡先生の本を読み終えた後にこんな記事を発見。
スマホ普及で契約数は激減? ネット生保の想定外 出口治明・ライフネット生命保険会長兼CEO(日経新聞)
引用。
ところで6年間経営をやってきて骨身にしみたことは「世の中は何が起こるか分からない。変化に対応するのが経営の神髄」というごく当たり前の事実だった。
もう一つ引用。
以上、当社の実例を挙げたが、お客さまの意識も技術も日々進化し変化し続けているのだ。ダーウィンの進化論ではないが「強いものや賢いものが生き残るのではない。変化に対応したものだけが生き残るのだ」というのが世の実相である。そして、経営とは、まさにそういった社会の変化に対応していく適応活動そのものである。
だそうである。なるほど。「洗濯機と猫の話」に似ているが、人間は物ではなく生物だということをしっかり肝に命じておこう。皆様「上司が昨日言っていた事と今日言っていた事と違う!」と文句を言わないようにお願いします。それでも文句は言うけどさ(笑)(くわしくは、研究者のための思考法「その5 知的しなやかさ 結果を出すリーダーはみな軸がブレている」)
さて島岡先生の本によると、日本人は世界一リスクが嫌いでリスクを取らないらしい。私はファイナンスが趣味である。「その6 研究者のあたらしい働き方 ///スラッシュのあるキャリア」みたいにすると「研究者/備忘録ブロガー/ファイナンス貧乏道研究者(隣の億万長者目標)」みたいなもんである。
で、ファイナンスの観点からいうと、リスクを取らないと将来危ない。アメリカの年金には401kとか403bというやつがあって、自分で選択肢のなかから運用方法を選択する。昔は401kの口座に資金を入れたら自動的にMMF(マニーマーケットファンド 日本語でなんというか不明)になった。MMFというのは「銀行にそのまま預金」と変わらないのである。要するにちっとも増えない。10万円入れても次の年にはほとんど10万円である。その一方でアメリカのインフレは年3%とも4%とも言われる。つまり毎年入れていく10万円は毎年着々と価値が下がって行くのである。まあ実際は逆で「定期預金の利率はインフレよりも低い」が正しいような気がするが。
結果、老後資金は真っ青!
従って徹底的にリスクを取らないという選択は、老後資金を作るためには実はものすごく危険なのである。言わば、茹でガエルの喩えみたいなもんですな。『2匹のカエルを用意し、一方は熱湯に入れ、もう一方は緩やかに昇温する冷水に入れる。すると、前者は直ちに飛び跳ね脱出・生存するのに対し、後者は水温の上昇を知覚できずに死亡する』(ウィキペディア) ちなみに、この話はウソで、カエルは後者でもちゃんと脱出するらしい。生物をなめちゃいけません。
「老後資金を定期預金で運用」と同じで、「人生を定期預金みたいに運用」は危ない気がするのである。私だけか、このイメージ持ってるの?
ではアメリカ人の標準的な401kの選択肢はどうなっているかと言うと、ここ一年でなんだか改正されて、何も積極的に考えなければTarget retirement fundになるように初期設定されている。そして年齢によって株と債券、現金の割合が変わって行く。株が一番危険で、債券が次に安全で、最後が現金である。一番標準的なTarget retirement fundはVanguardである。
配分は20歳ならば、
89.84% stocks(株)
10.00% bonds(債券)
0.16% short-term reserves(現金)
さらに深くみると、
Vanguard Total Stock Market Index Fund Investor Shares 63.0%
Vanguard Total International Stock Index Fund Investor Shares 27.0%
Vanguard Total Bond Market II Index Fund Investor Shares** 8.0%
Vanguard Total International Bond Index Fund 2.0%
ということで、全体の63%がアメリカの株である。
65歳ならば、
51.61% stocks
48.39% bonds
0.00% short-term reserves
である。内訳は、
Vanguard Total Stock Market Index Fund Investor Shares 36.2%
Vanguard Total Bond Market II Index Fund Investor Shares** 32.1%
Vanguard Total International Stock Index Fund Investor Shares 15.4%
Vanguard Total International Bond Index Fund 9.6%
Vanguard Short-Term Inflation-Protected Securities Index Fund 6.7%
ということで、65歳でも全体の半分が株で運用され、36%がアメリカの株である。
すごくない? このリスクの取り方! アメリカ全体で401kとか持っている人達がこんな風にアメリカ経済に投資をしていると考えると、アメリカってすごい。まあアメリカ人の老後資金ほどの危険な人生を送らなくてもいいけどさ、「人生を定期預金のように運用」よりはちょっともうちょっとリスクを取ったほうがいいよね。
ちょっと脱線して「初期設定」で思い出した話。前にハーバードの地獄の英語教室のクラスメートと授業中に話していたときに、なんと彼は二回も臓器移植を受けたらしい。普通臓器移植は、自分で「臓器を提供します」のところをマークしないといけない。すると人間はああだこうだ考えるので、マークしないで放っておくので、結果臓器移植用の臓器は少なくなる。フランス(だったと思う)では法改正が行われて、自分で「臓器を提供しません」にマークをしないといけなくなった。提供するのが嫌な人だけマークするのである。人間は積極的に「臓器を提供します」のところをマークをしたりしないが、積極的に「臓器を提供しません」にもマークしたりしないのである。結果、移植用の臓器は多くなり、彼は臓器移植を受けれるようになったそうな。この話すごくない?
さて、本題のリスクに戻って。
「リスク」という言葉がちょっと日本人が考えているのとアメリカ人の考えているのでは違うのではないかと思ったのでウィキペディアにいってみた。
日本語のウィキペディア。
リスク (risk) の定義にはさまざまあるが、一般的には、「ある行動に伴って(あるいは行動しないことによって)、危険に遭う可能性や損をする可能性を意味する概念」 と理解されている。
英語版ウィキペディア。
Risk is the potential of losing something of value, weighed against the potential to gain something of value. Values (such as physical health, social status, emotional well being or financial wealth) can be gained or lost when taking risk resulting from a given action, activity and/or inaction, foreseen or unforeseen.
なんというか日本語のほうでは、「マイナスになる可能性もあるけど、成功したらものすごくプラスになる可能性あり!」というイメージがない。「危険」とか「損」とかばっかり、と思っていたら、ウィキペディア日本語の下のほうで発見。
語源: ラテン語で risicare は「勇気をもって試みる」ことを意味する。それから派生した英語 risk も、動詞としては同じ意味をもつ。
そうそう「勇気を持って試みる」、まさしくそんな感じ。リスクの意味は「勇気をもって試みる」であり、間違っても「危険」ではない。「リスクを取る」とは「危険なことをする」ではない。ちなみに私は人生の分かれ道に経った場合、必ず「こっちのほうがワクワクして面白そう」というのを選択することにしている。理由は死ぬ直前に「なんだかんだあったけど、楽しかったよね」と思いたいからである。(くわしくは「その3 研究者の幸福学」)。それから「その2 研究者と英語」から引用。
今でも難しい決断をするときには、「困難な道が正しいと思え」という原則を思い出す。
ラリー・ドニソーン(陸軍士官学校元教官)「ウエスト・ポイント流最強の指導力』より」
これはちょっと変更して、「今でも難しい決断をするときには、『困難だけれど、面白そうな道が正しいと思え』という原則を思い出す」ぐらいがいいかと思う(笑)。
さて私は「研究者はみな海外に行くべきだし、日本人が外にでるのは大いに奨励すべきだ」と思っている+「生物の喩えが気に入った」のでInvasive spiecies(外来種)の話をすることにする。ウィキペディアによると、
外来種(がいらいしゅ)とは、他地域から人為的に持ち込まれた生物のこと。生態系や経済に重大な影響を与えることがあり、環境問題のひとつとして扱われる。
である。3年前だったかにハワイのHiloというところに行った。キラウエア山を見に行くためである。安くてトロピカルな感じの宿に泊まったら、夜にカエルの大合唱になった。
Coqui frogという。なんでもプエルトリコから持ち込まれて、天敵がいなかったので爆発的に繁殖、いまや本国プエルトリコよりも数が多いそうである(笑)
ワカメも船と共にアメリカ西海岸に到着、増えて問題になっている。(ちなみにワカメを食べるのは日本人と韓国人のみらしい)
これを人間に置き換えて見るとアメリカなんか世界中から来たInvasive speciesであふれているのである。私も日本からのinvasive speciesである。きっとアメリカ来て3代目ぐらいは歩が悪いに違い無い。
例としてボストンのあるラーメン屋さんの話をする。
彼は数年前に知り合いのパーティで知り合った。ラーメン屋をボストンに作りたいらしい。話をよくきくと、なんでも京都天天有の隣でラーメン屋をやっているらしい。「ラーメン激戦区(今はもっと?)の一乗寺の天天有の隣でラーメン屋をやる、その心は如何に?」とその時思ったわけである。言わば在来種が内部で競争している具合ですな。一年後彼はラーメン屋をボストンにオープン。ご存知かどうか知らないが、ボストンのラーメン屋は最近増えても5店ぐらいである。アメリカでラーメンはなぜか最近ブームなので大成功、毎日長ーい行列ができている具合である。しかも最近NPR(National Public Radio)にも取り上げられた!なかなか面白い作戦を取っているためですな。
Can Finishing A Big Bowl Of Ramen Make Dreams Come True? (NPR blog)
ラーメンの競争もない海外で、見事invasive speciesとして成功した例である。もっとラーメン屋来てもらってもいいけど(笑)博多ラーメン希望(爆笑)。寿司屋は中国系と戦うと駆逐されるので、相当高級寿司屋じゃないといけないからおすすめしないけど、お好み焼き屋は受けると思う。なぜ無いお好み焼き屋!外人お好み焼き大好きよ。
そして研究者がInvasive speciesとして成功しようが成功しなかろうが、英語の出来る日本人は非常に貴重らしいので、その辺のbiproduct(副産物)もあることにも注目(笑)(くわしくは島岡先生の本「その2 研究者と英語 日本人研究者はなぜ英語を勉強しなければならないのか」)さらなる副産物としては、ストレスに強くなるので、抗脆弱性もアップ(笑)
最後におすすめ。
5月からScience magazineの内容がちょっと変わった。雑誌一番後ろのページにWorking lifeというコラムが加わった。最初の人は物理学者でそこそこ良かったのだが、ソビエト連邦の崩壊でソビエト物理学者がどっとアメリカに来たので競争に勝てず、アカデミックから去ることにして、あっさり職を得た奥さん(化学者)についていき、サイエンスライターとしての職を得て、そのうちScience Careerのページを担当するようになった。という話である。
次に面白かったのはBrewing a career。
オランダ人ポスドクで、泣く子も黙るHHMIのJaneria farmで働いていたが、熾烈な外部内部の競争をみて「ここは俺のいるところじゃない」と痛感。新種の酵母を発見したので、近くのビール醸造所でBrewmeisterとして働くことにしたらしい。すばらし。私も新種の酵母発見してビール製造したい!日本酒でもいいけど。
その他には、A giant leap。
俺のおじいさんは102,800フィート(約31km)上空からジャンプした。今までアカデミックでやってきたけど、俺もジャンプしてNon-profit organization(NPO 非営利団体)で科学者として4月から働く!という人の話。清水の舞台から飛び降りるとは言うけど、31km上空からとでは比較になりませんな。
という感じで、「ああ、そんな人生もあるのねー!」と読んでいて楽しいので、良かったらどうぞ。私は最近はScience magazineは家に送られてくると後ろから読んでいるのである(笑)。週末の朝ご飯を食べた後にコーヒーを飲みながらWorking LifeからScience magazineを読むのは最高である。誰か毎週日本語に訳してウェブにでもアップしてくれると、日本の科学者も元気づけられるからいいのだけれど。それともそのぐらい英語で読めって?
さて。
「研究者のための思考法」を読んで得たインスピレーションをずーっと書いていってもいいのだが、この辺でおしまいとする。本を読んだ人は、私のブログを読んで「どうしてここからこの話が出る?」と思うに違いないし(爆笑)。
今日の教訓 困難だけれど面白そうな道が正しいと思え。リスクの本当の意味は「勇気をもって試みる」であり、間違っても「危険」ではない。Invasive speciesになる。終わりよければ全てよし。
過去のブログ
・研究者のための思考法 10のヒント 感想文その2
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