実験のお国柄

私の実験は濃度を変化させるものが多い。これをタイトレーション実験という。
日本にいるときはあまりしなかったが、ドイツ、アメリカでは始めてする実験では必ずタイトレーション実験をすることからはじめる。
何を細胞に加えるにしても、十分でなかったら効果がでないし、入れすぎると細胞によくない。

さて、このタイトレーション実験、実はお国柄が出るのだ。
ドイツの実験では、2倍希釈をしていた。例えば、
100
50
25
12.5
6.25
3.125
1.5625
0
という具合になる。試薬を作ったりするときは結構いい加減だが、こういう実験の時に「徹底的に」網羅するのは、さすがドイツ人という感じである。

しかしアメリカの場合は、違う方法を取る。私のボスはHalf logと言っている。
100
30
10
3
1
0

他にはLog
100
10
1
0
というものもある。

Half logの威力がどれぐらいすごいかは、実験をするとすぐわかる。
必ず欲しい条件が手に入るのである。

2倍希釈の場合は、100から1まで網羅するのに、7個の条件が必要だ。しかし、half logの場合は5個。これは必然的に試薬、その他の物の節約になる。
Logではもっと節約するが、最適条件が50の時にヒットする確率は非常に低い。
2倍希釈では濃度が50の時の値は得られるが、12.5以下のデータは全くの無駄ということになる。
Half logでは30で近い値が得られる。
もっとキチンと調べたいときには、30から100の間で2倍希釈を取ることができる。
また逆にもっと幅広く調べたい時はLogで調べればいい。
アメリカ人は、ざっと幅広く、なおかつ細かく取るのである。

問題は濃度計算だ。
2倍希釈、10倍希釈の試薬を作るのは非常に簡単だ。
Half logなんて一体どうやってそんな濃度計算をするのだろうと思っていたら、私のボスはテンプレートをくれた。
100ul作るときはこう。200ul作るときはこう、という風に。
計算がさっぱりわからなかったので、半年ぐらい放っておいたが、使用する必要性が出てきたので、最近1時間ばかりかけて、計算してみた。
結構簡単にテンプレートは作れた。私のボスはもっとややこしい計算をしていたことが判明。

そういうことで、このアメリカ人の方法が最近のお気に入りだ。
最初の実験で最適条件をひっぱり出してくるのは非常に大切なことだ。これだけでなぜアメリカ人がサイエンスの世界でトップなのか、わかる気がした。

日本人は、海外のいい物を全部もらって来て、改良を加えるのが趣味なので、紹介してみた。

今日の教訓 濃度変化実験にはHalf logを使用すること。

追加 画像としてHalf logのテンプレートを載せた。計算が間違っていないことを祈る。

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