目からウロコのサイエンス その3 一生のおつきあい

A change of strategy in the war on cancer(ガンと戦う手法を変更する)Natureを購読してないと読めない。 2009年5月28日のNature Podcastで紹介されていたものである。Transcript(しゃべっている内容を英語の文章にしたもの)はこっち。PodCastとTranscriptはは普通に一般人でも聞けるし読めるはず。

PodCastの内容で、「ガンと戦う新しい方法を提案」している部分を適当に訳す。
今までは、「薬でがん細胞を可能な限り殺し、患者がなおることを望む」という方法を用いて来た。このためMagic Bullet(魔法の弾丸:普通の細胞を殺すことなくガン細胞だけを殺す魔法の薬)を開発することが薬開発の目標だった。
だがガンを「慢性の病気」とみなして治療するのはどうか、つまりガン細胞を完全に除去しようと努力するのではなく、むしろコントロールできる程度にがん細胞を殺すという方法で治療するのはどうかという提案である。

もし薬で全部がん細胞を殺そうとすると、薬に感受性のある細胞は皆死ぬが、薬に耐性のあるガン細胞は残る。この場合、薬に感受性があるガン細胞が死んだので、(場所と栄養が行き渡るようになった)耐性のあるガン細胞はものすごい速さで増殖する。薬の投与を再開しても、薬剤耐性のあるガン細胞は死なずに増殖する。
それを防ぐため、薬の最小限に抑えてガンの大きさを一定に保ち、薬剤感受性のあるガン細胞で、耐性のあるガン細胞の増殖を押さえ込む。

と、ここまでPodCastで聞いて「ホンマかい!」と私が思ったのは言うまでもない。

「このアイデアをサポートするような 研究はあるのか?」という質問に対してマウスで実験をした研究者が言っていた。
マウスの卵巣ガンのモデルで、一方のグループには プラチナを大量投与して治療を行った。ガンは縮小しほとんど無くなったが、プラチナ耐性のガンが数週間後に現れてマウスは死んでしまった。もう一方のグループには、ガンの大きさを一定に保つよう一定量のプラチナをマウスに投与した。すると無期限にガンの大きさを一定に保ったまま無期限に(寿命が終わるまで?)マウスを生存させることができた。
これを人間に応用すると、ガン患者は決して「完全治癒」することないが、低容量の抗がん剤を一生飲むことによってガンの増殖を抑えることができ、死なない。

と、ここまで聞いて、また「ホンマかい!」と思った私。

「患者も医者の納得しないんじゃないの?」という質問に対して「でも心臓病や糖尿病のような慢性疾患みたいなものだ。完全に治癒しないがコントロールすることはできる。」という返事。最後に「決してもっと効果的な治療を探すのをやめるということではない」という結論になっていた。


詳しくは、5月28日のNature Podcast, "A new war on Cancer"を聞いて下さい。

今日の教訓 それにしても、ものすごい発想転換。

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目からウロコのサイエンス その2 パンダは旨味レセプターが欠損している

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