「ポスドクの流儀」+転職の報告

日本から「ポスドクの流儀」っていう本が送られて来た。簡単にいうと、「本送るからレビュー書いて」ということである。(実際の文章はもっと丁寧に書いてある)
レビュー書くから、もっと本送ってくださいねー!!!!!

さて本題に入って。
ポスドクの流儀
悩みを解きほぐして今日から行動するためのチェックリスト




謝辞
日本語版発行に寄せて
まえがき
第1章 ポスドクという選択
第2章 英国の高等教育の背景
第3章 研究者として英国に渡る:海外へ渡る人への教訓
第4章 ポスドクという立場で働くことを最大限活用するには
第5章 研究責任者(PI)との関係
第6章 論文発表と生き残り
第7章 教えることと監督すること
第8章 移転可能なスキルの開発とチャンスのつかみ方
第9章 効果的な人脈形成の要点
第10章 予測不可能な研究─リスクと見返りのバランス
第11章 生産性を高め、ストレスを減らし、プレッシャーを軽減する
第12章 研究の多様性
第13章 研究公正と倫理
第14章 キャリアと意思決定に対する責任
第15章 学術界を超えるキャリア
第16章 フェローシップ
第17章 「講師への飛躍」(講師職:仕事の内容と応募方法)
第18章 成功する履歴書の書き方
第19章 面接と質問
第20章 結論:今、あなたに知っていて欲しいこととは?
第21章 あなたへ

研究室に一冊おすすめ。出身研究室の先生や他の大学でラボ構えた先生に送ろうかしら?
気合いの入った博士課程学生やポスドクなら購入して読むぐらいおすすめだけれど、3200円だとちょっと高い? でも世界に羽ばたく博士課程学生やポスドクなら、「貧乏だから買えない」で終わるんじゃなくって、先生にごねるとか、図書館の人におねだりして買ってもらうとか、博士の友達と共同で買って回し読みするとか、このぐらいの「問題解決能力」が欲しいところ。

もとはWhat Every Postdoc Needs to Knowという英語の本で、それを日本語に訳したもの。前にMaking the Right Moves: A Practical Guide to Scientific Management for Postdocs and New Faculty, Second Editionという本をお勧めしたけど、Making the Right Movesはアカデミックに残ってfacultyになる人が読む本。ポスドクの流儀はアカデミック以外のポジションも考慮している。

なんたって、イギリスではphDとったうちの10%ぐらい(ひょっとしたら10%以下?)しか大学に残らないからね。前データ持っていたんだけれど、どこ行ったかな。。。。アメリカもあんまり変わりない感じである。大学に残らない人達以外は当然ながら別の仕事を探すわけで、そういうときにどうするとか、いろいろ書いてある。と、ここまで書いて、報告してなかったことを思い出したので書くけど。

転職しましたー!!!!!

アカデミックから出ちゃいました(笑) 
面白そうだったので抵抗できなかったのよー。

いただいた本に戻って。
面白かったところ役にたったところ。

「日本語版発行に寄せて」
藤田先生の苦しみの話。この話を聞くと博士課程の学生とかポスドクとかはびっくりすると思うけれど、4年目ぐらいでヨロヨロになっているポスドク(藤田先生)に「ビックジャーナルを目指せ」と言って説得してトップジャーナルに論文出させたヴァルター先生は偉いと思う。トップのPIは良い芽が出て来るまでは面倒を見ず(というか見る暇ない)、良い芽が出たらすぐさま最高のデザインでトップジャーナルに出す。残虐に聞こえるけど、修行し直すんだったらそういう先生の元でもう一度みっちり働いてみたいわ。だいたい無能なポスドクだったら4年もキープしません。

こういうことはPIになってから気づくのよねー。PIやった経験は良かったわ。

「第8章 移転可能なスキルの開発とチャンスのつかみ方」
ポスドクが気づいてないスキルを列挙して、それをResume(職務経歴書)に書き出す話。Writingの能力があったり、プレゼン能力があったり、学生教えてたり(部下教えられる)、データ分析能力など、結構いろいろあります、ポスドクのスキル。私ももう一度見直そうっと。

「第9章 効果的な人脈形成の要点(Essentials of Effective Networking)」
これは最近私が頑張っていることである。島岡さんの「行動しながら考えよう」に「新しいことをはじめてみよう」という章がある。そこから引用

成功循環モデルのポイントは「良い結果を出すためには、何をするかではなく、誰とするかが重要である」だ。成功循環モデルは、そもそも企業やチームのパフォーマンス改善に関する理論であるが、個人にも当てはまると思う。
成功循環モデルに従えば、40代以降に新しいことを始めるためには、新しい知識や考え方を身につけることに腐心するよりも、その新しい分野に関係する良いコラボレーターやパートナーを見つけることが先決である。

引用終了
私の経験から言っても、良いコラボレーターやパートナーだと、びっくりするほどすんなり事が運ぶ。すんなり事が運ぶことに気づいているからだと思うが、どこのトップにいる人達は思っているよりもaccessibleである。日本語に訳すると、とっつきやすい人? 近づきやすい人? あっという間に昇進したから偉ぶるかと思えば、前と同じく気さくで近づきやすかったり(笑)
上の島岡さんの本のページには「40過ぎたらコラボ」というポストイットが貼ってあるが、40以降でビジネスしようと思ったら独りじゃ無理。それよりは人を知っていったほうが話が早い。ラッキーなことにボストンにいる人達は日本人も日本人以外もかなり高品質である。

ということで、最近の私のLinkedInの目標は500+のconnectionsを作ることである。大の大人がビジネスするのに100以下じゃこころもとない。LinkedInは面白くって、人が転職したらどこ行ったかわかるし、前の職場やコラボ相手がどこにいるかも全部わかる。LinkedInが使われるのは、もちろん転職するときらしいけど、「どこの企業が何したか」よりも「どこにいた誰が何をして、今どこで何しているか」と、個人が大切になってきている証しである。だいたい同じ企業に一生勤める時代じゃないし。皆転々としますよ。
だから500+目標! (現在485 connections) どこかのグループにお邪魔して増やすか。。。

ところで「私は偉くない学生だから、ポスドクだから」と怯んでPIに連絡しないのは、損である。PIだったからわかるけど、PIは連絡してくる元気な学生とかポスドクとか企業の人とかが好きである(笑) スパムメールみたいに連絡してくるんじゃなくって、ちゃんと研究理解して、丁寧に「研究室にお邪魔していい?」って聞いてくるんだったら、「どうぞー」って感じである。

Accessibleな人は、(その後話が発展するかどうかはともかくとして)話ぐらいは聞く

「第18章 成功する履歴書の書き方」
アメリカとイギリスは違うのか、履歴書と職務経歴書がごちゃごちゃになった。私は転職した後いろいろな人に聞かれるので、アメリカのCV(アカデミック)とresume(インダストリー)は違うことを説明し、今までの経験(スキル)を3ページぐらいに要約してくださいとアドバイスしている。

膨大な資料を完結に要約できるのは素晴らしいスキルです。 誰も読む暇無いしさ!

関連して親(父親)にもらったチャーチルの文章。「理科系の作文技術」という本の最初に載っているらしいのだが、英語版を見つけたので、良かったらどうぞ。
This memo from Winston Churchill on 'Brevity' is all you need to improve your writing

「第19章 面接と質問」
転職したときの面接もここに出て来る質問と同じ感じである。でジョークのビデオを見つけたので、ここに添付。

イギリスのジョークってすごいよねー。しかもよく出来てるし。

1.5年後の何をしているか、はよくある質問。
2.いろんな人がつながってるので、前の職場とか人の悪口は言わない。500 connectionsに近づいてくると気づくが、本当に人はいろんなところでつながっている。
3.面接ではいろんな質問が来るが、嘘をついたり、怒ったり、ひるんだり、いじけたりしないのが大事。

読み終わって、私がアメリカに来た頃はもっとアクティブ(日本人のイメージではアグレッシブ)に動いてたなと思いだした。またアクティブに動くべきですね。

その他関係ないけど、私の好きなThe Hitchhiker's Guide to the Galaxyがまた出て来ていたので、サイエンスをする者としては「必須図書?」か思われ。。。。

追加情報
「第1章 ポスドクという選択」から引用

ロンドン王立協会の報告書「The Scientific Century: securing our future prosperity」によると、科学・技術・工学・数学(STEM)の分野における博士号取得者のうち、常勤の学術研究職(講師以上)に就けるのはわずかに3.5%です。ほとんどの人は「他の」数々ある興味深い仕事に進みます。

「第15章 学術会を超えるキャリア」から引用

ポスドクであるということは、あなたには強みがたくさんあるということです。(上位1%以内の)高学歴で、教養もあり、数学の知識もあり、自発性があり、チームワークでも(大部分が)単独でも仕事ができ、少なくとも3年間は他の誰も研究していない分野の調査プロジェクトを担って来ました。

ということで、上位1%以内の高学歴をそのまま漂流させておくのは国家として問題かもしれませんねー。

今日の教訓 ポスドクの流儀 いい本だったので、おすすめ。

過去のブログ
正しい質問をすることの大切さ(The Hitchhiker's Guide to the Galaxyの話)
行動しながら考えよう 感想文その2
行動しながら考えよう 感想文その1

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