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漬け物とトルマリンと遠赤外線と

今年も親の誕生日が来たので、例によって例のごとく「今年は何が欲しいの?」って訊いた。今年は漬け物をつくる容器が欲しいそうである。前は石臼だったし、今年は漬け物の容器かと思って、「いくら?」って訊いたら13000円とのこと。 なんでそんなに高いねーん! ということで、どんなやつやねんということで名前を教えてもらったら、浅漬け名人というやつらしい。 アマゾンのウェブサイトでみたら、普通の漬け物容器 である。なぜ13000円? アマゾンより。 「浅漬け名人」なら初めての方でも簡単に浅漬けの味が楽しめます ●ご飯を炊く前に「浅漬け名人」に野菜を漬けておけば30分~60分で出来上がり、毎日作りたてで美味しい自家製漬物 が味わえます ●浅漬け名人の秘密は電気石タウマリン鉱石。電気石タウマリンが発生するマイナス電子が、お漬物をとっても深みのある美味しい味にします。また同時に遠赤外線も放出し、熟成スピードを加速させています ●本体に使用されているタウマリン鉱石が放つ遠赤外線が野菜のスピード熟成を加速させ、乳酸菌たっぷりの風味豊かな漬け物ができ上がります ●塩漬けだけでなく、キムチやぬか漬け、みそ漬けなどオリジナル漬け物も出来ます ●服部栄養専門学校学校長・食育研究家 服部幸應先生推薦 だそうである。電気石タウマリン鉱石ってなによ? さらに調べてみたら、タウマリンはトルマリン(tourmaline)だそうな。タウマリンなる石は存在しない。 ついでに トルマリンのウィキペディアのページ を見ると、 トルマリン(tourmaline)は、ケイ酸塩鉱物のグループ名。結晶を熱すると電気を帯びるため、日本名・電気石(でんきせき)[1]と呼ばれている。 さらに下のほうを見ると、 疑似科学としてのトルマリン トルマリンがマイナスイオンを発生し精神的、肉体的にリラックス、リフレッシュさせる。その他にもトルマリンは遠赤外線を放出する、有害な電磁波を吸い取るなどとされ、ブレスレット、枕、風呂にいれるパワーストーンなどが販売されているが、科学的には何の根拠もなく、疑似科学の域である。悪質な霊感商法として販売される場合もあるので、購入時には注意が必要である。 だそうである。 遠赤外線だったら、ひょっとしたら容器暖かいのかいな?(冗談) そしてマイナス電

カール・セーガンのコスモス

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カールセーガンのコスモスをNetflixで見つけたので、借りてみた。1980年のテレビシリーズである。DVDあるいはWatch instantlyで見れる。 カールセーガンはウィキペディア によると、 カール・エドワード・セーガン(Carl Edward Sagan, 1934年11月9日 – 1996年12月20日)は、アメリカの天文学者、作家、SF作家。元コーネル大学教授、同大学惑星研究所所長。NASAにおける惑星探査の指導者。惑星協会の設立に尽力。核戦争というものは地球規模の氷河期を引き起こすと指摘する「核の冬」や、遺伝子工学を用いて人間が居住可能になるよう他惑星の環境を変化させる「テラ・フォーミング」、ビッグバンから始まった宇宙の歴史を”1年という尺度”に置き換えた「宇宙カレンダー」などの持論で知られる。 だそうである。1980年は惑星探査機ボイジャーがいろんな惑星を巡っていた直後という時期であった。 1980年のテレビシリーズであるコスモスはものすごくゆったりとしている。ゆっくりしているということはいいことである。一番感動したのはアラビアのロレンスで、なんと途中でintermissionが入って曲が流れていたが。オペラみたい。それにくらべて最近の映画とか、なんでそんなにガタガタしているんだろう。有名ドラマシリーズの「24」なんかその最たるものである。私の元同僚(フランス人)によると、主人公が24時間何も食べないのならともかく、トイレにも行かないのは非現実的だということで、見るのをやめたそうである。 さて、コスモスに話を戻して。 そのゆったりコスモス、ゆったりのくせに話のレベルがものすごく高度なのであった。昨日は第1話と第2話を見たが、1話は予想どおり宇宙の話だったが、第2話は進化の話だったのであった。なぜか 壇ノ浦の戦い + 平家カニ の話からスタートして「?」と思ったが、人為的進化の例として上げられていたのであった。。。。(ちなみに奥さんは生物学者。ついでに言うと平家がにの人為的進化の例はたぶんちがうやろう」という説あり) Cosmosめっちゃ面白いんですけど。こういうその時期の最先端サイエンスを説明するテレビシリーズっていいよね。1980年のシリーズなので、突っ込みどころ満載だったりするが、第2話の直後にアップデートがあって10

Space shuttle(スペースシャトル)

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先週学会をかねて(?)スペースシャトルを見に行った。スミソニアン博物館にある。てっきりWashington DCの真ん中にあるのかと思えば、 なんとWashington Dulles international airport(ワシントン・ダレス国際空港)の隣 であった。Washington DCの隣の空港(ロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港)へ行くチケットを取ってから気づいた! なのでまずホテルに行き、 そこからバス(6ドル)で1時間 のDullesまで行く羽目になった。 Dulles空港に着いた後、案内所のおじさんに「Space shuttle見に行きたいんだけど、どうやっていけばいいの?」と聞いた。 おじさん「どこ行くシャトル?」 私「スペースシャトル!」 おじさん「あー、博物館ね」 といくことで、博物館へ行くシャトルバスのスケジュールを教えてくれた。50セント。 だだーん! いましたスペースシャトル! (写真はクリックすると拡大します) ぬぬ。結構満身創痍。 下の耐熱板も、ところどころ新しいのがはめてある。。。。ということは、はげたか、損傷がはげしかったのか? 緊急救助の場合はここを切断しろ。。。とのことである。おわー。 後ろのエンジン。案内のおじさんによると、5分間で燃料ほとんど使い切るそうである。 後ろから見た図。ということで、スペースシャトルは引退してもおかしくないほどのご老体だったのであった。お勤めご苦労さまです。残念ながら、中は見せてもらえなかった。 ついでに広島に原爆おとしたB29偶然発見。コンコルドもいた。 今日の教訓 やっぱスペースシャトルはすごいっす。 過去のブログ ・ シンシナティ その2 ・ アメリカ人の発想

チョコレートとノーベル賞の関係

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ひさしぶりにブログを更新。アメリカのどこかでくたばってるんじゃないかと思われそうだが、ちゃんと生きているのでご安心を。 学会がワシントンDCであった(+スペースシャトルを見に行った) その直後にグラント申請の締め切りがあった。 明日は研究室のお引っ越し朝8時から(向こうの通りに移動) 来週の月曜日に30分セミナーをするが、スライドまだ作ってない! ということで、単に忙しかったのであった。今もまだ忙しいけど! ということで、本題に入って。 この前誰かに見せてもらった図についてである。なんでもチョコレートをよく食べる国民のほうがノーベル賞を多く取るというグラフで、あははー!と面白がってみていたのだが、なんと出所はここである。 Chocolate Consumption, Cognitive Function, and Nobel Laureates New England Journal of Medicine! 折角だから ウィキペディアのページから 引用。 『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』(英語:The New England Journal of Medicine、略称:N Engl J Med または NEJM)は、マサチューセッツ内科外科学会によって発行される、英語で書かれた査読制の医学雑誌である。継続して発行されている医学雑誌のうちでは世界で最も長い歴史を誇り、また世界で最も広く読まれ、最もよく引用され、最も影響を与えている一般的な医学系定期刊行物となっている。 引用終了。インパクトファクターは2011年で、53.298である。その泣く子も黙るNew England Journal of Medicineが「チョコレートを良く食べる国民のほうがノーベル賞を取る人が多い」という、データが一つだけの論文を出したのである。Methods(方法)を見ると、 ・ノーベル賞受賞者のデータはウィキペディアから取った。 ・チョコレートのデータはどこぞの会社のウェブサイトから取った。 ・そして統計を取った(どの統計を使ったか、ソフトは何かは書いてない) しかもディスカッションあやふや。 そんなんでNew England Journal of Medicineに論文だせれるんかー!そんなんでいいのかー! ち

こいつは一体なにもん?

iPS細胞で山中先生がノーベル賞を取った記事を読んでいたら、どうも日本では今にせもんが話題になっていることを発見。 「iPS臨床応用」日本人表明で混乱 米大学は否定 (日本経済新聞) しかも、そのにせもんの話は英語でも話題になってる。 Faked Affiliation of Stem Cell Researcher Not Caught for Years(Science Insider) Stem-cell fraud hits febrile field(Nature) こいつは一体なにもん? その なにもんはウィキペディアによると 、それでも東大に雇われていたらしい。。。。そういうのって、普通雇う側がなんかもうちょっとチェックするもんじゃないのー!!!!! こっちで真剣に研究して真剣にポジション探してる日本人研究者はいっぱいのに、全く。 読売社長「私の指導力不足」と陳謝 iPS治療報道で (日本経済新聞) 日本のメディアってScience writer(サイエンスライター)が足りないんじゃないかと、たまーに思うけどね。 今日の教訓 なんか、がーーーっくりする。 過去のブログ • 山中先生ノーベル賞受賞

山中先生ノーベル賞受賞

シンシナティ行っていた時にラジオで山中先生がノーベル賞を受賞した話をきいた。  その後、山中先生がアメリカから日本に帰国した時に、いかに待遇が違いすぎてひどすぎてびっくりしたかを、親からこんこんと教えられた。マウスの世話まで自分でしていたらしい。 私マウスの世話したことないから! 試薬注文はやったことがあって、ブーブー文句言っていたけど! 山中先生、大切にしないと日本からでちゃうで!  さて山中先生、発想がアメリカ的なので、3月には寄付を募るため、京都マラソンで完走したらしい。うちの親は「変わってるわねー」と言っていたが、こっちでは結構普通である。うちも全身性エリテマトーデス(私の研究している病気)のためにボストンで歩く会とかを財団が行って、私が「全身性エリテマトーデスのために歩くから、寄付して」と、私の周りの人に言うのである。 ボストンマラソンも出場するときは、制限タイムを切るか、あるいは結構かなりの寄付を周りの人から募って、参加資格を取得するのである。なので、まず制限タイム切った組が出発し、その後寄付募ってはれてゼッケン獲得した人達が、走る。大抵ガンとか難病とか、そういう寄付である。ということで、山中先生がマラソン完走して寄付を募ったのは別に不思議ではないのである。おもしろいけどね。 その寄付のウェブサイト、まだ閉じてないらしく、なんとまだ寄付できるらしい。 山中先生の研究を応援し、日本国外流出を心配する人は、ぜひともこちらへどうぞ! 今日の教訓 「私もマラソン出場して寄付募ろうかなー」と親に言ったら、「あんたフルマラソン走れるの?」と聞かれた。無理かもね。

カロリー制限で長生きできる?

ひさびさに「うちの親」登場、というよりは今回は親がネタ。 結構前にうちの親が「最近カロリー制限しているのよ。なんでもカロリーを何%か(忘れた)制限すると、健康で長生きできるらしいのよ」と言っていた。 日本に住んでる日本人女性で、長崎で魚食べてる人がカロリー制限して長生き? 一体どんだけ生きるつもりやねん! ただでさえ日本人女性は長寿やのに、 ガリバー旅行記 に出てくる「 死なない人間 」みたいでこわいやんけー!  ちなみに読んだ事無い人にネタばれすると、ガリバーがある町だったか島だったかに行ったら、そこには死なない人間がいるということだった。ガリバーが「素晴らしいじゃん」と言ったら、住人、「いやいや、そんなことは無いですよ」との返事。 彼らは死なない。 しかし、年を取らないわけではない! しかも、定年(?)になったら財産を子孫に譲らないといけない! しかも、ボケる! しかも、性格のいやーな所が全部でてくる。しかも年を取るごとにすごみが増してくる。 しかも、100年ごとぐらいに言語がビミョーに変わるので、世代が変わると言葉が通じない! うーむ。ジョナサン・スウィフト、人をよーくみとる。その頃にそんな風に年を取る人がいたかどうかは知らないが、今後の日本とかそういう風になりそうである。ガリバー旅行記を読んで以来、私の「長寿」のイメージはこんな感じであった。うちの親が120歳とか150歳とかになって、こうなったらどうするー。ちなみにガリバー旅行記にはラピュタの話もあって、やっぱり城が空中に浮かんでいるのであった。 さて、話を元に戻して。 そのカロリー制限は長寿になってお肌もつやつやになるらしいとのことだったが、この前Natureに記事があった。 Ageing: Mixed results for dieting monkeys (Nature) 記事によると、カロリー制限お猿さんとカロリー普通お猿さんで比較実験をして27年(!)たったが、今のところ差はなし。差があるという結果もあるが、差が無いという結果もあり。記事にはやせたお猿と普通サイズのお猿さんの写真がある じゃ、うちの親はなんのためにカロリー制限? それにしても、「腹が減っては戦はできん」の言葉通り、私の場合「腹が減っては仕事ができん」なのだが、カロリー制限してみた人の

イグノーベル賞授賞式

今年もハーバード大学のイグノーベル賞授賞式に行って来た。ふざけまくりの授賞式だが、ノーベル賞を実際に取った人が舞台にずらっと並んでいたりする、不思議な授賞式である。"make people laugh, and then make them think(人を笑わせて、そして考えさせる)"事に賞が与えられるのである。 そして今年も(も)日本人が取っていた。 イグ・ノーベル賞に日本の研究者 (NHK) しゃべっている人の声を遅らせて本人に返すと、しゃべれなくなることによって、おしゃべりな人を黙らせるSpeech Jammer(スピーチジャマー、、、、邪魔とかけてる?)を開発したことによる功績である。 2012年受賞者一覧はこっち 。 こっちに日本人受賞者のリスト 。 毎年のように取ってるぞ。一体どうなってる? ま、日本人とっぴなもの発明させたら他の国は勝てないからな。。。。 そしてドイツ人は見当たらないが、一体どうなってる? 今日の教訓 楽しかった。 過去のブログ ・ イグ ノーベル賞授賞式 2010

一流の人の脳みそがどうなってるか

ブログネタ帳(私の書きかけブログの重合体)から見つけたネタ。 ” Mihaly Csikszentmihalyi on flow(ミハイル・チクセントミハイ 「フローについて」) ”というTed talkを見たら結構面白かった。 なんでも、この人、芸術家や学者の一流の人達の脳みそが、活動している時にどうなっているかを研究しているのである。 例えばある作曲家が曲を作曲している時の心境をどう説明しているかというと、彼は自分の存在をほとんど感じず、まるで自分の手が勝手に動いて作曲しているように感じるそうである。その間は我を忘れて、時間も空腹とかも忘れて作曲している。一流のスケーター、周りに尊敬されている一流のCEOとかににインタビューしても同じような状況。 このような「忘我(英語でエクスタシーというらしい)」の状況を作り出しているのは何か、そして他の人ともそういう「忘我」の状況を体験させるにはどうすればいいかをミハイル・チクセントミハイは研究しているのである。TED talkの中でミハイル・チクセントミハイはさらっと言うのだが、「このようなエクスタシーの状況に至るまでは、その分野で10年ぐらい真剣に取り組まないといけない。」そうである。 今日の教訓 石の上にも3年、ではなく10年!

Earth: The Biography

BBC Earth the BiographyをNetflixで借りた。 例によって例のごとくBBCのEarthシリーズはとっても面白いのである。今回のシリーズは、地球について。 1.火山 2.大気 3.氷 ナレーターはDr. Iain Stewart(Geologist)である。Geologistの日本語訳は地質学者ね。 あー!私もBBC専属(?)の地質学者になりたい! なって全世界を旅したい! 南アフリカ共和国にある、昔の冷戦のなごりの、ものすごく早い飛行機(イギリス製)があって、それに乗って成層圏に飛び出すとか。 エチオピアだったっけ(?)の火山でマグマがずーっと吹き出しているところに行って近くで見るとか。 グリーンランドの氷河がものすごい早さで滑って溶けていっているところを、見に行くとか。なんでも仮説によると、氷が溶けて、それが氷河の下に潜り込んで、それで氷河が非常に滑りやすくなっているらしい。1997年ぐらいまでは問題なかったが、今は毎日ガンガン溶けているらしい。 氷が全部溶けると、海面が20フィートぐらい上がるとな。 どおりでハワイの海岸の砂浜が非常に小さいと思ったら。いや、関係ないかもしれないけど。 そんなこんなの地球の仕組みを、コンピューターグラフィックスを使いながら、きちんと説明していく。ちなみにこの場合のDr.は、日本でいうところの博士であるが、博士取ったからって別に大学で学者をして研究とかをしないでいいのである。このナレーターみたいに、複雑な仕組みを一般人に説明するとか。 それにしても、いつも思うけど、地球ってとっても危ういバランスの中で生命を保っているのよね。「ものすごく長い目で見ると多少の二酸化炭素の変化やメタンの変化は地球的には問題ないが、人間とか生命に対するダメージは大きい」と地質学者であるナレーターはものすごーい時間で考えていたが、100年ぐらいしか生きない人間に取っては、はた迷惑な話である。そういえば「地球にやさしい」という文句があったが、あれは正確に言うと、「地球に住んでる、人間を含める生物にやさしい」の間違いだって誰かが言っていたが、本当にそうである。 今日の教訓 それにしても、私もBBCのナレーターになりたい! 過去のブログ ・ BBC Lifeと動物園

Lipid rafts(脂質ラフト)は存在しないかも知れない?

という、「あらー!」な話をScience Podcastで聞いた。Lipid raftsのコンセプトは数十年も経っている、言わばサイエンスの「常識」のような物であるが、これまで誰もその存在をはっきりと証明した人はいないらしい。Lipid raftsを扱った論文は3000以上にのぼる。。。。 ずるっとこけそうになるわ、ほんと。 まあ「既成概念、常識だと思っていることが実は違う」、っていうことを証明するのがサイエンスだから、まあいいと言えばいいんだけれど。 もっと知りたい人は、これをどうぞ。 Do Lipid Rafts Exist? 私は読んでない。 さて研究者は経験を積むと、いろんな概念はいともあっさりつぶれることを知っているので、あんまりいろんな事を100%信じたりしないようになる。自分で実験して、「あー論文のこのデータ、やっぱり再現できないじゃん」ということなんてザラであるからである。これをphDコースの学生が経験から学んでいくのを見るのは結構面白い。 phDコース入りたてほやほやの、やる気まんまんの学生は、読んだ論文全てを信じる。が、論文を読み進めて行くうちに、ほとんど全ての研究には相反する意見があることに気づく。アメリカの偉いところは、学生二人にあるトピックを発表させ、一人の学生はある観点から、もう一人の学生は全く逆の観点から議論させるところであるが。あれ面白いから、日本でもやったらいいのに。 phDコースも中盤から終わりにかけると、次第に「発表された論文は全て本当じゃないかも知れない」と気づき始める。発表された論文のデータでも、自分でやったら再現できないとか、そういうことがじゃんじゃん出てくるからである。しまいには、「もう発表された論文なんか、信じない!!!」と言いに来たりする(笑)。 「おお、それに気づいたか。おめでとう。またphDに一歩近づいたね」と意味不明ななぐさめ(?)をするのだが。 誤解の無いように書いておくが、発表された論文がウソを発表したわけではない。LPSが試薬にコンタミしていたとか、微妙に細胞の培養条件が違うとか、すこーし設定条件が違うとか、そういう、ちょっとしたことで再現できなかったりするのだ。(LPSの試薬のコンタミは自然免疫をやっている者にとって天敵である)。 今日も「あの論文の実験と一緒のこと

Computer security: Is this the start of cyberwarfare? (コンピューターセキュリティ サイバー戦争のはじまり?)

2001年9月11日のテロでは、テロリストが飛行機の操縦を練習して、ビルに突っ込んだ。 10年後の今では、「実際に飛行機を操縦する」なんてことをしなくていいらしい。 一緒にFI planningで記事を書いている F Friesさんのブログ で紹介されたNatureの記事を読んでみた。 Computer security: Is this the start of cyberwarfare? なんでも去年かおととしかにイランでコンピューターウィルスが発見されたそうな。そのウィルス(ってか、Malwareって書いてあるけど、Malwareって何?)は今までの「データを盗む」タイプのウィルスではなくって、実際に工場やらいろんなところのスイッチを消したり、バルブ(栓)を閉めたりするプログラムを攻撃できる、新種のウィルスらしい。 インターネットを介して広がり、USBメモリースティックを介して感染した機械は発症する。調べていた人達は最初イランのNuclear plant(原子力発電所)を攻撃目標としていたと思った。その後そのウィルス Stuxnet はイランにある核燃料精製工場の遠心機のプログラムを攻撃し、停めてしまうように作られていたことが判明。なんでもウラン238とウラン235の混合物からウラン235を精製する遠心機である。その核燃料精製工場は、西側(欧米のことね)が、「実はイランは核兵器を作っているのではないか?」と疑っていた工場である。あまりに精巧に作られたプログラムだった(+ターゲットが特定すぎ?)なため、「アメリカ政府がやったんじゃないか?」とか「イスラエル政府がやったんじゃないか?」という騒ぎになっていたらしい。誰がやったのか、それは絶対わからないだろうから、ともかくとして。 F Friesさんが言う通り、えらいこっちゃ! 何がえらいこっちゃかわからない方は、想像力が足りません。 このようなタイプのウィルスでは、 ・飛行機を同時に一斉に操縦不能にすることも可能。 ・発電所を同時に一斉に機能不全にさせて、一つの国家で大停電を起こす事も可能。もちろん日本にある原発52基を同時に暴走させる、なんてことも可能。 ・プリウスみたいなコンピューターの載った車を乗っ取って、一斉に操縦不能にすることも可能。 うぎゃー、考えただけでもぞっとする

過ぎたるは猶及ばざるがごとし その2

「過ぎたるは猶及ばざるがごとし その1」の続き。 Janeway's ImmunoBiologyのChapter 13 Allergy and Hypersensitivityを無事読み終わった。めでたしめでたし。いろんな新しい情報がちょっとずつ入っている。伊達に改訂版を数年ごとに出しているわけではないらしい。 さて、花粉症は花粉が都会の汚い空気に混ざって引き起こす病気だと考えられていた。それは多分本当だと思う。例えば、私が京都で学生をしていた時に、うちの妹が実家から花粉症の季節に遊びに来ていた。そして花粉症を悪化させていた。次の年には忘れているので、また花粉症になりにわざわざ京都にくるのである。北山杉のせいか、それとも空気が悪いせいか、どうも実家よりも京都のほうが空気が悪いらしい。 その花粉症、どうも汚い空気のせいだけではないらしい。教科書(上の緑の本)と他の情報によると、Hygiene Hypothesis(日本語では衛生仮説)というのがあるらしい。この仮説によると、産まれる前から乳幼児になるまでに、いろいろな感染症にかかると、のちのちアレルギーになりにくい。もともと発展途上国にはアレルギーの人がほとんどいないことからもうなずける。 そして、都会に住んでるか田舎に住んでるかは問題ではないらしい。農家生まれの子供はアレルギーになりにくいという研究がある。昔ながらの農家には牛や豚などの家畜がいて、それを母親が手入れしていて、(家畜の糞を含め)いろんなところに細菌がいて、触っているわけである。さらに農家では殺菌処理をしていない牛乳を母親を幼児も飲んでいる。それらの中にも細菌がいる。つまり、細菌にしょっちゅう接しているわけである。 「殺菌処理してない牛乳って美味しそう!」と読んでいて思ったが。(私ってなんて食い意地がはっているんでしょう) と、ここまでかいてから T細胞 の話をしなければならない。T細胞とは免疫細胞の一種で、他の免疫細胞を助けるヘルパーT細胞 (Helper T cells, Th cells)というのと、感染してしまった細胞を殺すキラーT細胞というのがある。 そのヘルパーT細胞には4つか5つかの種類がある。数年ごとにいろんな新しい種類が出てくるので、T細胞研究者ではない私はあやふやである。で、今日はTh1 cellsと

今日の算数 その1

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LED電球は本当にお得? 電気代と賢い選び方(All About) から表を借用。 LED電球・蛍光灯・白熱球の寿命料金比較 さて問題です。1日6時間電灯をつけたとします。注意書きにあるとおり、1kwh 22円で計算するとします。 1.白熱球からLED電球に変更した場合、何年で元が取れるでしょうか。 2.白熱球から電球型蛍光灯に変更した場合、何年で元が取れるでしょうか。 3.電球型蛍光灯からLED電球に変更した場合、 何年で元が取れるでしょうか。 私の数学用脳みそはさびついていたらしく、計算式作るのに多少時間がかかった。 晴れて計算が出来た人は、LED電球の今後の値下がりや、電気代の上昇など、いろいろな要素も想像して、購入をご検討ください(笑)。 今回の Kiplinger's personal finance (私の購読しているファイナンスの雑誌)では「何年で元を取れるか」で計算してあるので、ちょっと趣向を変えてみた次第。 だいたい、40000時間て1日6時間使用しても18年超だし、「18年後は自分は生きていないかもしれん」と思ったら買う気も失せるしね。 答えは次回(?)のブログで。1週間とか経っても答えを載せたブログがアップされない場合は、コメント欄なりで請求してください。 今日の教訓 いやはや、数学って大事だわ。

過ぎたるは猶及ばざるがごとし その1

意味: 何事でも度を超えていきすぎたものは、不足していることと同じようによくない。 ( ことわざデータバンク ) 5月になってボストンはいろんな花が咲いて、「5月だ!春が来た!」という感じである。しかし私にとっては「5月だ!アレルギー性結膜炎だ!」なのであった。去年は雨がたくさんふっていたのであまり大変じゃなかったのだが、今年は晴れているので、大変なのである。目が真っ赤になるのである。仕方なくCVS(薬局)で買って来たアレルギー性結膜炎用目薬をさす。  くー。 昨日今日は久しぶりに雨が降ったので、ちょっとマシである。それにしても目のために雨乞いをするとは、一体なんたることか。でも同僚に「花粉いっぱい降ってるからね」と言われた。なんでも車の上に花粉が積もっているのを見たらしい。 くー。 日本では皆が杉花粉症になっている1ヶ月後に花粉症で、軽く鼻に異常が出ていた(←アレルゲンは一体なに?)。ドイツでは花粉症にならなかった。アメリカでは目が真っ赤。これはドイツに帰らなければいけない。さもなくば、一生花粉症に苦しむ事になる。 さて、花粉症について書こうと思ったが、一応免疫学を研究しているので、適当なことを書いてはいけない。そこで教科書を引っ張りだす私。だいたい、授業で免疫学について習ったわけではないし、Immuno biologyはドイツにいるときに同僚と一緒に読破したけれど、そんなものは忘れた。 自分の得意分野は最先端知識を持っているが、ひとたび離れると基本も危ういのであった。全くええ加減な。 ということで、Chapter 13 Allergy and Hypersensitivity (アレルギーと過敏症 44ページ)を読み出してしまったので、しばしお待ちを。 今日の教訓 早く花粉飛ぶの終わらないかしらー。 過去のブログ ・ アメリカの部屋について、もんくもんく

「石油」つくる藻類

数日前に同僚と「アラブの国の問題」についてしゃべっていたら、「俺はひょっとしたら、第3次世界大戦が始まるんじゃないかと思うんだ」と言っていた。石油争奪戦らしい。 ひょえーーーー。 さて、うちの親はテレビっ子であるが、その親によると、最近石油を作る藻の有望なものが発見されたらしい。藻から石油を作るアイデア自体は結構前からあったが、今回の藻はかなり早く増殖するのでよいらしい。 生産能力10倍 「石油」つくる藻類、日本で有望株発見(Asahi.com)   効率よく「石油」作る藻、筑波大発見 代替燃料に期待、生産コスト1リットル50円程度  Asahi.comの記事によると「国内の耕作放棄地などを利用して生産施設を約2万ヘクタールにすれば、日本の石油輸入量に匹敵する生産量になる」らしい。しかも「また、この藻類は水中の有機物を吸収して増殖するため、生活排水などを浄化しながら油を生産するプラントをつくる一石二鳥の構想もある。」らしい。 まさに一石二鳥! 下水処理場で培養すればいいのでは! 確か微生物処理しているはずだし。 ということで、同僚に「日本で石油を作る藻が発見されたんだ。将来日本は自分で石油をまかなうことになる。その石油争奪戦である第3次世界大戦には参加しないよ」と言ったら、「そうだよな。この前ので懲りたよな」と言われた。 たしかにー!  今日の教訓 第3次世界大戦には参加したくないから、筑波大の人、頑張ってねー。 過去のブログ ・ 実験成功

実験成功

実験成功した。(なんの実験なのかは、「 今日と明日の気温 」をご覧下さい)  1. -19℃だとシャボン玉は凍る。 2. -17℃だとシャボン玉は凍らない。 今日の教訓 また5年後ぐらいにまた実験しようっと。 過去のブログ ・ 今日と明日の気温

涙の中の化学物質

今日朝からヒーターが壊れていたのか動かなかった。 朝9時 24℃ 朝10時 23℃ というふうに、気温が1時間に1℃ずつ下降していく。 研究者的に考えて、このままこの状態が続くと仮定すると 今日の夜0時には 9℃ 明日の朝6時には 3℃ そして明日の夜6時には なんと−9℃! 「たいへんだー! 家の中で寝袋使わないと!」とか思っていたのだが、今日の12時にヒーターは直ったのか、動き始めた。 ま、部屋の温度が外の気温より下がることはないわな。 さて本題に入って。 数日前のNew York timesの記事。 In Women’s Tears, a Chemical That Says, ‘Not Tonight, Dear’ (女性の涙の中に化学物質があって、それは「今夜はダメよ、あなた」というメッセージを送っている) 簡単に説明すると、 女性に 感情的に 泣かれると、その涙に何か化学物質が入っていて、そのせいで男性は、その日は性的行為をする気をなくすらしい。 記事読んで、一人で受けてしまった。(ちなみに全部は読んでない) この元の論文、なんと泣く子も黙るScience magazine (サイエンス)に載っている。読みたい方は Human Tears Contain a Chemosignal からどうぞ。 New York Timesの記事の最後にLast authorのコメントが載っている。それによると、「性的行為をしたくない女性は、感情的に泣くなんてことはしないで、『いや』と言ったほうがいい。」とのこと。そりゃそうだ。 今日の教訓 それにしても、何が涙に入ってるんだ? 過去のブログ ・ The Animators of Life

The Animators of Life

やっと英語教室の本読み終わったー! 疲れた。 さて、本題に入って。 The New York Timesで面白いビデオを見つけた。 The Animators of Life (生命のアニメーション) アメリカの中間選挙が終わって、共和党が勢いを盛り返して来たので、Nature PodCastもScience PodCastも「サイエンティストは何をやっているかを普通の人にもっと説明すべきだ」と言う話が出ていた。 こういうビデオがあると面白いよねー。 今日の教訓 こういうビデオがあると面白いよねー。 過去のブログ ・ BBC Lifeと動物園

BBC Lifeと動物園

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今 affirmative action についてのエッセイ(英語教室の宿題)を書いている途中なのだが、疲れたので休憩。 最近BBCのLifeというシリーズを発見したので、早速Netflixで借りてみている。BBCのplanet earthといい、Blue planetといい、もう自分でDVD買って保存版にしてしまおうかと思うぐらい、面白いのであった。なんだかDavid Attenboroughのナレーションのほうがアマゾンでの評価が高いのだが、残念なことにNetflixではOprah Winfreyのほうしか手に入らない。まあ、よいとしよう。 Lifeなので、動物の話である。 動物はどうしているかというと、 食べ物を探しているかー 食べられそうになって逃げているかー 逃げ損ねて食べられてしまうかー 結婚相手を探しているかー 結婚するために他の雄と戦っているかー である。動物の世界はつくづく厳しいのであった。 例えば、Humpback whale( ザトウクジラ )のメスが、ある海へ来る。メスは来たことを知らせるために、海面からジャンプしたり、ヒレをバタバタしたりする。それを聞きつけたオスが皆して集まってくるのだが、メスはわざとその場から去る。 集まって来たオスは、メスの後を追いながら最後の一頭になるまで戦うのである。怪我もするし、死んでしまったりするらしい。 圧巻。 それとか、巨大なタコのメスが100,000個の卵を、飲まず食わずで孵るまで守り、最後に死んでしまうとか。 あー、 以前からおもっていたのだが、ライオンはオス一頭に対してメスが数頭いる群れを作っているのだが、狩りをするのは、メスライオンである。 オスライオンは一体何をしているので? 私から見たら、「自分の食い扶持ぐらい働けー」と思うのだが。男性からしてみればオスライオン人生は理想かもしれない。ハーレム作ったあげく上げ膳据え膳? でも他の強いオスライオンが来たら群れから追い出されてしまうけど。 と、そーんな厳しい動物の世界を、おそらく大画面でみればとってもきれいだろうなと思いながら、MacBook Pro13インチで見ていたりするのであった。 さてさて、そんな野生のかっこいい動物達の映っているBBC LifeのDVDその1を見た後、 動物