ATM (Automatic teller machine)

この前研究室の人が私のところへ来て言った。
「ATMでお金を自分の口座に入れようと思ったのだけれど、あなたの怖い話を思い出して、やめたの」
そう、アメリカの銀行のATMは怖いのだ!

私はドイツに銀行口座を持っている。
だが、ユーロ外貨預金でもしない限り、アメリカ、ドイツ、日本に口座を持っていることは単に頭がこんがらがる原因になるので、ドイツからアメリカの銀行に お金を転送し、ドイツの口座を閉めようと思った。いろいろ検討した結果、一番いい方法はドイツの銀行カードを使ってお金をこっちの銀行でおろすことだっ た。手数料タダなのである。逆にこの方法がアダとなったのだが。

私のドイツのキャッシュカードの一日の限界は1000ユーロ(約14万円)なので、1000ドル(約12万円)ずつ引き出していた。
もちろんアメリカは危険な国なので、1000ドルもってふらふらしてたら、いつ狙われるかもしれない。
しかし窓口にいつも持っていくのも面倒くさい。大体研究者は銀行の開いている時間には働いているし(土曜日は寝ている)、研究室から銀行は遠いのだ。
銀行のお姉さんが、ATMによるお金の入れ方を教えてくれた。(別に私が入れ方を教えてといったわけではない。そんなものは教えてくれなかったらよかった のにと思う。)
まず、Deposit(預金)の紙を書く。チェックブックの後ろについている物も同じ。ここに自分の口座番号。入れた日付などを書く。
現金を数える。
封筒にその紙と、現金やチェックを入れる。
封筒の封をする。
ATMにカードをいれ、Make a depositというボタンを押すと、「いくら入れるか?」と聞いてくるので、数字をいれる。すると下の入り口が開くので、そこに封筒を入れる。
領収書をもらって、終わり。
大抵この方法でうまくいったので、毎回1000ドルずつ転送した。

ある日オンラインバンキングでチェックすると、そのうちの一つが1000ドル入れたはずなのに100ドルしか入っていない。900ドルがどこかに消えたのである。ちゃんと入れたのに、消えてしまったのである。
ご丁寧にも日本人友人はインターネット上から、同じ方法で6000ドル取られてしまった人の話を探してくる。
つまり、私だけでなく、そういう話があるのである。

相当腹が立ったので、銀行の窓口に文句を言おうと思ったら、なんと銀行から手紙が送られてきた。
「あなたは1000ドル入れた入力してましたが、実際には100ドルでした。もし異議があるのなら、ここに電話してください」
つまり、やっぱりそういう話があるから、銀行としてもちゃんと「間違いありませんね?」と連絡してくるのである。
この場合窓口に行ってはいけない。もみ消されるかもしれない。銀行の支店の人数は10人前後。もし誰かがやったとしたら、友達同士なので、かばいあうかも しれないのである。

ということで、私はATMのレシートと手紙を持って研究室に行き、アメリカ人の友達に事情を話した。
彼の反応
「えーーーーーーーーーー?? 現金を封筒に入れた? 現金入れたらダメだよ。チェックはいいよ。チェックは本人じゃないと確認できないから。でも現金は 本人の物とは誰も確認できないから、封筒開けた人がポケットに入れたとしても誰も証明できないよー。俺は誰も信じないよ。たとえ俺を生んでくれた母親でも」
私「え?お母さん信じないの?」
彼「いや、そうじゃなくって、そういう表現があるの。」

ということで、その友達は銀行から来た手紙の電話番号に電話をかけてくれた。
人間に達するまで、いろいろなボタンを押すこと5分。
彼を通していろいろ説明をすること30分。

彼が私に説明したことを理解したところによると、銀行の対処の方法は、とりあえず900ドルを私に与え、同時に30−45日間じっくり調べるということ だった。もし私が正しいと銀行が判断した場合は、900ドルは永遠に私のもの。
もし私が正しくないと銀行が判断した場合は、銀行から法的抗力のある書面が送られてきて、私はそれにサインをしなければいけない。その場合は法廷行 き。(アメリカはなんでも法廷行き)
もしサインをしなかった場合は900ドルを私の口座から引き出す、というものだった。

研究室の友達は「たぶん大丈夫だよ、封筒を開ける人は誰なのか、必ずチェックされているし、物を盗んだ人は普通取り調べされるときはボロがでるものだか ら。」となぐさめてくれた。

数日後本当に900ドルが私の口座に入れられていた。「本当に900ドル口座に入っていたよ」と友達に言ったところ、「もちろん、銀行はあなたをハッピー にしたいからよ」と言われた。日本なら銀行はたとえ自分に不備があっても、900ドルを一時的に返したりしないだろう。まず不備がないのが日本の銀行だが。

電話だけでは不安だったので、「監視カメラを見たら1000ドル数えている私がいるので、チェックしてくれ」と手紙に書き、領収書のコピー、元の銀行から のコピーを同封して銀行に送った。もちろん支店にではなく、手紙を送ってきたところへ送った。

約一ヵ月後、「あなたの口座に一時的に送られたお金は永久のものになりました。よってこの議論は終わりにします」みたいな手紙が来た。
非常に難しい文章で書いてあるが、つまり「あなたの900ドルはあなたのものでした」である。
無事、ちゃんとお金が返ってきた!よかったー!

ATMはチェックを入れる分には問題ないのだが、これ以降チェックも銀行に持っていっている。
ドイツではお金を預けたことがなかったので、この機能があったかどうかは知らない。

今日の教訓 アメリカの銀行のATMにお金を入れてはいけない。

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